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16 ◇あいつはもう駄目かもしれん

作者: 設樂理沙
last update publish date: 2026-04-17 01:56:10

 相続のお話のあった日、お義父さんがおっしゃった。

「あいつはもう駄目かもしれん! 」

 『駄目かもしれん』という言葉は、そのあと度あるごとに思い出してしまう。

 悲しいほど、この言葉が胸に染みる。

 たぶん、私も心のどこかでそう思っているからかもしれない。

 お金の切れ目が縁の切れ目……じゃないけれど

 お金が底をついてやっと夫は女と切れたようだ。

 夫の新しい就職先が決まった。

 お給料は以前の半分にも満たないけれど、収入があるってだけで

安心感が半端無い。

 決まった収入があるのはすごく有難くもある。

 私も早期復職を考えている。

 2人の収入を合わせれば何とかなるはず。

 早く元の穏やかな暮らしに戻りたい。

 なのに……

勤め始めて半月過ぎた頃から夫の不平不満が徐々に増えていった。

 帰宅して食事中の会話といえば、同僚や会社への不満ばかり。

 給料は前の会社より半分以下なのに仕事の量は逆に増え、同僚や

上司の資質はレベルが低く低脳ばかりと、悪口三昧。

 そんな夫の罵詈雑言を聞きながら私は心の中で呟いた。

仕事もそっちのけで浮気に夢中になり、家族や会社に迷惑をかけ5年も

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    38 ◇救急車のち病院 えっ、うそぉ~っ。 私ったら……。 娘の碧を連れてないことに気付いた。  連れてた娘を忘れて横断歩道を渡るなんて、自分が……自分の行動が信じられなかった。   私は歩を止めていきなり向きを変えて駆け出した。 向きを変えた時、ずっと遠くに知らない女性がバギーの中の娘を覗き込んでいるのが視界に入った。 ……と瞬間私の身体はポーンと高く宙に浮いていた。 私はもうすっかり暗くなった夜空を見ていた。  その時空を見ながら、あぁ私は地面にたたき付けられるんだなぁと思った。 娘を置き去りにしたまま、どうしよう。 娘は無事夫の手に渡されるだろうか? 誰か悪いヤツに連れて行かれはしまいか、それだけが気掛かりだった。 私はどうやらあまり大きく飛ばされなかったようで、コンビニの駐車場沿いに植えられているツツジの植木の上に落下したのだった。 次に気がついたのは病院の上だった。 視線の先に見知らぬ女性に抱かれている娘が目に入った。 あぁ、良かった……ほんとに。 自動車事故に遭って病院に運ばれた自分の側に娘がいて一緒にいられるなんて、なんて自分は運がいいのだろうと思った。 他のことでは散々なのにね。 目覚めたことに気付いた看護師が先生を呼んだ。 先生からの質問が始まった。 そして側にいた娘を抱いている女性とも話すことになった。 その女性は既婚者で3人の子の母親だということだった。 とても子供好きな人のようで私がコンビニで買い物をしている時から可愛い娘が気になって、ずっと私たちの様子を見てたらしい。  私の後から店を出たその女性は、バギーの中の娘を置いたまま私がいきなり小走りに走り出したので娘のことが気になって一緒にいてくれたのだとか。 そして私のあの事故。 救急車を呼んでくれたのも彼女だった。 名を浅田美世子さんと言う。 救急車に娘を連れて私と一緒に乗って病院まで付き添ってくれたのだとか。 その一連の話を聞いて涙が零れた。「本当になんて言ったらいいのか。 私たちのことを……娘のことをずっと見守ってくださってありがとうございました。  車に当たって宙に浮いた瞬間、実はあなたと娘が見えてました。 その時に娘を置いたまま死んでしまったら、もしくは私だけが病院に運ばれて娘がひとり

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